日本と海外でこんなに違うアレルギー表示 — 訪日・海外旅行で知っておきたい制度の違い

公開日: 2026-07-23

「アレルギー表示」と一口に言っても、どの品目を表示しなければならないかは国・地域(法域)ごとに法律で別々に決められています。日本で見慣れた表示の感覚のまま海外の食品を選ぶと、必要な情報が載っていないことに気づかないおそれがありますし、逆に日本を訪れる海外の方も同じ戸惑いを経験します。この記事では、日本・米国・EU・Codex(国際規格)の制度を、それぞれの一次資料に基づいて比較します(いずれも2026年7月時点)。日本の制度そのものの解説は食物アレルギー表示制度の基礎知識をご覧ください。

一目でわかる4法域の比較

法域表示対象(義務)特徴
日本特定原材料9品目(卵・乳・小麦・そば・落花生・えび・かに・くるみ・カシューナッツ)。別に推奨20品目木の実も果物も個別品目で指定。そば・いくらなど日本特有の品目がある
米国主要アレルゲン9品目(乳・卵・魚・甲殻類・木の実・落花生・小麦・大豆・ごま)2021年のFASTER Act(法律)でごまが追加され2023年1月発効。「木の実」は1カテゴリ
EU規則1169/2011 附属書IIの14品目セロリ・マスタード・ルピナス・亜硫酸塩・軟体動物など日本にない品目を含む。外食にも情報提供義務
Codex(国際規格)常に表示すべきリスト(グルテンを含む穀物・甲殻類・卵・魚・落花生・乳・ごま・特定の木の実6種、および一定濃度以上の亜硫酸塩)FAO/WHO合同の食品規格。各国制度の参照点で、2024年の改定でごまを追加し、大豆は各国がリスクに応じて義務化する第二リストへ移動

Codexは条約のような強制力を持つものではなく、各国が制度を作る際の国際的な基準です(詳しくはコーデックス規格の解説)。実際の義務は各国の法律で決まるため、上の表のとおり品目は法域ごとにずれています。

「木の実」の数え方からして違う

違いが最もよく表れるのが木の実(ツリーナッツ)です。

  • 米国: 「木の実」を主要アレルゲン9品目のうちの1カテゴリとして扱います。
  • 日本: 「木の実」という括りはなく、くるみ・カシューナッツは義務、アーモンド・ピスタチオ・マカダミアナッツは推奨、と品目ごとに個別指定します。
  • EU: 「ナッツ類」として8種を明示的に列挙します(アーモンド・ヘーゼルナッツ・くるみ・カシューナッツ・ペカン・ブラジルナッツ・ピスタチオ・マカダミア)。
  • Codex: 2024年改定で「特定の木の実」として6種(アーモンド・カシューナッツ・ヘーゼルナッツ・ペカン・ピスタチオ・くるみ)を常時表示リストに挙げ、ブラジルナッツ・マカダミア・松の実は各国判断の第二リストに置きました。

つまり同じ「ナッツアレルギー」でも、どの木の実が制度でカバーされるかは国によって違います。たとえばヘーゼルナッツやペカンは、日本の29品目には含まれていません。日本でくるみ・カシューナッツが義務化された経緯はカシューナッツ義務表示化の解説木の実類アレルギー増加の背景で詳しく扱っています。

海外から日本に来る方が戸惑うポイント

日本の表示ルールは「義務9品目+推奨20品目」の2階建てで、推奨品目は表示されないことがあります(詳しくはアレルゲン一覧表の読み方)。海外の感覚とずれやすいのは次の点です。

  • ごま: 米国・EU・Codexでは義務品目ですが、日本では推奨(任意)です。日本のラベルにごまの記載がなくても、使われていないとは限りません
  • セロリ・マスタード・ルピナス: EUでは義務品目ですが、日本では29品目の対象にすら入っていません。
  • そば・いくら: 逆に日本には、そば(義務)やいくら(推奨)といった食文化を反映した品目があります。そばは麺類だけでなく、そば茶や菓子などにも使われるため、日本を旅行するそばアレルギーの方には重要な情報です。

当サイトには英語ページもあり、日本国内チェーンのアレルゲン情報源は英語版検索ページからも探せます。

日本から海外に行く方が戸惑うポイント

同じことが逆方向にも起こります。

  • そば・いくら・やまいも・ももなど日本の個別品目は、米国・EUの義務リストにはありません(Codexではそば(buckwheat)が各国判断の第二リストに挙げられている程度です)。これらのアレルギーがある方は、現地のラベルのアレルゲン強調表示だけでは判断できず、原材料表示の全体を確認したり店に直接尋ねたりする必要があります。
  • 大豆: 日本では推奨どまりですが、米国・EUでは義務です。品目によっては、海外のラベルの方が確実に情報が得られることもあります。
  • EU圏では、セロリ・マスタード・軟体動物(いか・貝類など)まで義務表示されます。EUの制度の詳細と旅行時の注意点はEUの食物アレルギー表示制度にまとめています。

外食のルールの違い — 日本は対象外、EUは外食にも義務

品目リストと並ぶ大きな違いが、外食の扱いです。

  • 日本: 表示義務の対象は容器包装された加工食品で、飲食店で提供される食品や出前は対象外です。チェーン各社のアレルゲン一覧表は自主的な取り組みとして提供されています(外食に表示義務はない?制度の適用範囲)。
  • EU: 規則1169/2011は包装されていない食品にも適用され、レストランや食堂などが提供する食品でもアレルゲン情報の提供が義務です(第44条)。情報をどんな形で示すか(メニュー記載・口頭+掲示など)は加盟国ごとに定められます。
  • 米国: 表示義務は包装食品が対象で、レストラン等でその場で提供される食品は原則として対象外です。米国の制度の詳細はアメリカの食物アレルギー表示制度にまとめています。

「外食でもアレルゲン情報が必ず出てくる」国と、「出てくるかどうかは店次第」の国があるわけです。旅行先ではこの前提の違いを知っておくだけでも、確認の仕方が変わります。

旅行前にできる準備

  • 渡航先の品目リストを事前に知る: 自分のアレルゲンがその国の義務品目かどうかで、ラベルや店頭でどこまで情報を得られるかが変わります。各国の公的機関のページで最新のリストを確認しておきましょう。
  • 現地語で伝える準備をする: アレルゲン名を現地語で書き出したメモやアレルギー連絡カードを用意しておくと、店頭での確認がスムーズです。伝え方の考え方は飲食店への確認のコツも参考になります。
  • 国内旅行・訪日の場合: 宿泊や機内食まで含めた準備は旅行・宿泊先での食物アレルギー対応で、国内チェーンの公開情報はチェーン検索で確認できます。

制度は各法域で見直しが続いており、品目リストは今後も変わりえます。この記事の内容は2026年7月時点の各法域の一次資料に基づいています。個別の食品・料理の最終確認は、現地の表示と提供者への確認を組み合わせて行ってください。

参考資料

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療上の助言ではありません。掲載内容の正確性には努めていますが、制度や各社の公開情報は変更されることがあります。飲食の前には必ず店舗・運営会社の最新の公式情報をご確認ください。

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