アメリカの食物アレルギー表示制度 — FALCPA と FASTER Act、日本との違い

公開日: 2026-07-23

アメリカへの旅行や滞在では、日本と異なるルールで書かれた食品ラベルを読むことになります。米国の包装食品のアレルゲン表示は FDA(米国食品医薬品局)が所管しており、日本の制度としくみは似ているものの、対象品目や書式に実践上重要な違いがあります。この記事では、2026年7月時点の情報を FDA の公表資料に基づいて整理します。日本の制度そのものは表示制度の基礎知識を、各国比較の全体像は日本と海外の制度比較をご覧ください。

制度の枠組み — FALCPA(2004年)と FASTER Act(2021年)

米国の表示義務の土台は、2004年8月に成立した FALCPA(食物アレルゲン表示・消費者保護法)です。連邦食品医薬品化粧品法を改正して「主要食物アレルゲン(major food allergen)」を法律上定義し、2006年1月1日以降にラベル付けされる食品への表示を義務付けました。当初の対象は8品目でしたが、2021年4月成立の FASTER Act によりごま(sesame)が9品目目として追加され、2023年1月1日から適用されています。発効前に流通していた在庫の回収・貼り替えは求められなかったため、切り替え直後はごま表示のない旧ラベル品も店頭に残りました。

なお FASTER Act の後、ごまの混入管理を避ける目的であえてごまを原材料に加えて表示するメーカーがあることを FDA が公表し、望ましくない実態として業界と協議しています。ごまアレルギーの方は「以前は入っていなかった製品」でも毎回ラベルを確認するのが安全です。

「主要食物アレルゲン」9品目

英語名日本語
Milk
Eggs
Fish魚類(例: bass、flounder、cod。魚種名で表示)
Crustacean shellfish甲殻類(例: crab、lobster、shrimp。種類名で表示)
Tree nuts木の実(例: almonds、pecans、walnuts。種類名で表示)
Peanuts落花生(ピーナッツ)
Wheat小麦
Soybeans大豆
Sesameごま

魚・甲殻類・木の実は「グループ」としての指定で、ラベルには具体的な種類(魚種・ナッツの種類など)まで書くことが求められます。また2025年1月のFDAガイダンス(第5版)で、乳は牛だけでなくヤギ・羊など反芻動物の乳を、卵は鶏だけでなくアヒル・ガチョウ・ウズラなどの卵を含むという解釈が明確化されました。

"tree nuts" の範囲 — 2025年にココナッツが対象外に

「木の実」としてどのナッツが表示義務の対象になるかは、FDA のガイダンスのリストで運用されています。2025年1月の第5版で対象は次の12種類に整理されました: アーモンド、ブラックウォールナッツ、ブラジルナッツ、カリフォルニアウォールナッツ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ハートナッツ(heartnut)、マカダミアナッツ、ピーカンナッツ、松の実、ピスタチオ、くるみ(イングリッシュ/ペルシャウォールナッツ)。

このときココナッツのほか、栗・ヒッコリーナッツ・シアナッツなどが主要アレルゲンの扱いから外れました。対象外になった品目は「Contains」欄には書かれなくなりますが、原材料としては引き続き原材料表示欄に記載されます。切り替えには移行期間があり、旧ラベルがしばらく流通する点にも注意してください。木の実アレルギーをめぐる動向は木の実アレルギー増加の背景でも扱っています。

日本との違い — 実践上のポイント

  • そばは米国の対象外: 日本の義務9品目のうち、そばは米国のリストにありません。逆に、えび・かには米国では「甲殻類」として一括で(ただし種類名つきで)義務対象です。
  • 日本では推奨どまりの品目が米国では義務: 大豆・ごま・魚は米国では義務表示ですが、日本では「特定原材料に準ずるもの」(任意表示)です。米国の感覚で「書いてなければ入っていない」と考えるのは、日本のラベルでは通用しません(逆方向の注意点)。また、いくら・オレンジ・ももなど日本の推奨品目の多くは、米国では制度上の表示対象ではありません。
  • 表示の書式: 米国では、原材料名の直後の括弧書き(例: "whey (milk)")か、原材料表示に隣接した "Contains" 文(例: "Contains wheat, milk, and soy.")のどちらか一方で表示すれば適法です。Contains 文がないラベルもあるため、原材料表示欄まで読む必要があります。
  • 外食は表示義務の対象外: FALCPA の表示義務は包装済み食品が対象で、注文を受けてから包む食品(例: サンドイッチの包み紙)やレストランでの提供には適用されません。この点は日本と同じ構図です。州等が採用する FDA の Food Code(モデル規則)には従業員のアレルゲン知識に関する規定がありますが、メニューへの表示義務ではありません。
  • "may contain" は任意: 混入(コンタミネーション)に関する注意書きは法律上の義務ではなく、書かれていない製品もあります。

旅行・滞在での実践

ラベルを読むときは「原材料表示欄+Contains 文」をセットで確認し、木の実・魚・甲殻類は具体的な種類名を探します。レストランでは表示義務がない前提で、口頭で明確に伝えることが大切です。一般的な言い方の例:

  • "I have a severe food allergy to ◯◯."(◯◯に重いアレルギーがあります)
  • "Does this dish contain ◯◯?"(この料理に◯◯は入っていますか)
  • "Please make sure my food does not come into contact with ◯◯."(◯◯と接触しないようにしてください)

アレルゲンを書いたカードを用意しておくと確実です。海外旅行全般の準備は旅行・宿泊先でのアレルギー対応を、EUの制度はEUのアレルギー表示制度をご覧ください。制度は改定されるため、渡航前に FDA の最新情報を確認し、個別の食品・料理については製造者や店舗への確認を習慣にしてください。国内の外食チェーンのアレルゲン情報はチェーン検索から調べられます。

参考資料

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療上の助言ではありません。掲載内容の正確性には努めていますが、制度や各社の公開情報は変更されることがあります。飲食の前には必ず店舗・運営会社の最新の公式情報をご確認ください。

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