木の実類アレルギーはなぜ増えている? — 全国調査データで見る10年の変化

公開日: 2026-07-23

クルミやカシューナッツといった「木の実類(ナッツ類)」のアレルギーが近年増えている、という話を耳にした方は多いかもしれません。これは印象論ではなく、消費者庁が3年に一度実施している全国調査の数字にはっきり表れています。この記事では、複数の調査年の報告書を並べて木の実類がどう増えてきたのかを確認し、制度側の対応と、外食で木の実に気をつけるための実践的なポイントを整理します。数値はいずれも記載時点(2026年7月)で公表されている消費者庁の報告書に基づくものです。

全国調査が示す10年の変化

消費者庁は、医療機関を受診した即時型食物アレルギーの症例を全国から集める「即時型食物アレルギー全国モニタリング調査」を、平成14年から3年ごとに続けています。原因となった食物を集計するこの調査を、2017年・2020年・2023年の3回分で比べると、木の実類の位置づけが大きく変わったことがわかります。

調査(実施年)解析症例数木の実類(全体順位/割合)うちクルミうちカシューナッツ
2017年4,851例第4位 / 8.2%251例82例(1.7%)
2020年6,080例第3位 / 13.5%463例(7.6%)174例(2.9%)
2023年6,033例第2位 / 24.6%916例(15.2%)279例(4.6%)

木の実類が全原因食物に占める割合は、2017年の8.2%(第4位)から2023年には24.6%(第2位)へと約3倍になり、症例全体の約4分の1を占めるまでになりました。2023年の調査では、第1位の鶏卵(26.7%)との差もわずかです。品目別に見ると、木の実類の増加を主にけん引しているのがクルミで、割合は前回調査の7.6%から15.2%へと約2倍に増え、単一の品目としては鶏卵に次ぐ第2位になりました。カシューナッツも前回の2.9%から4.6%へと約1.6倍に増えています。2023年の報告書では、マカダミアナッツ(約1.5倍)やピスタチオ・ペカンナッツ(いずれも約2倍)といった他の木の実も増加傾向にあると記されています。

なぜ増えているのか — 報告書が述べる範囲

「なぜ増えているのか」について、調査報告書は断定を避けつつ、いくつかの手がかりを挙げています。2020年の調査報告書は、木の実類が増えた理由は今後さまざまな観点から検討すべき課題だとしたうえで、2005年以降のクルミの年間消費量や、カシューナッツ・アーモンドの年間輸入量が少しずつ増えており、国内での消費量の増加が要因の一つである可能性を指摘しています。ナッツが健康的な間食やパン・菓子の素材として身近になったことが、背景にあるとみられます。

もう一つ報告書が触れているのが、木の実どうしの「交差抗原性」です。クルミとペカンナッツ、カシューナッツとピスタチオは、それぞれ構造が似ているため一方に反応する人がもう一方にも反応しやすいことが知られています。実際、義務・推奨表示に加わったクルミ・カシューナッツと連動して、ペカンナッツやピスタチオの症例も増えていることが2023年の報告書で示されています。ここで挙げた以上の原因の解釈は本記事の範囲を超えるため、詳しくは各報告書をご参照ください。

制度も後追いで動いている

症例の増加を受けて、表示制度の側も対応を進めてきました。容器包装された加工食品では、まずクルミが2023年に義務表示の「特定原材料」に加わり、続いてカシューナッツが2026年4月の改正で義務表示となって、特定原材料は9品目になりました。同じ改正で、交差抗原性のあるピスタチオが推奨表示(特定原材料に準ずるもの)に新たに加わっています。

これらの改正内容と、店頭表示がすぐには切り替わらない経過措置についてはカシューナッツが義務表示に — 2026年4月改正で変わったことで詳しく解説しています。制度全体の枠組みは食物アレルギー表示制度の基礎知識もあわせてご覧ください。なお、こうした義務・推奨表示のルールが適用されるのは加工食品であり、外食は対象外である点は変わりません。

外食で木の実に気をつけるポイント

木の実は、外食では思わぬ料理に使われています。ケーキ・クッキー・チョコレートなどの洋菓子はもちろん、パスタやサラダのトッピング、ドレッシングやペースト状のソース(バジルソースやサテソースなど)、カレーやエスニック料理の隠し味など、「見た目では分からない形」で入っていることが少なくありません。

注意したいのが「ナッツ」という言葉の曖昧さです。日常会話では落花生(ピーナッツ)も木の実もまとめて「ナッツ」と呼びがちですが、落花生は豆(マメ科)で、クルミやカシューナッツなどの木の実類とは別の分類です。表示制度でも両者は別々の品目として扱われます。「ナッツ不使用」という表現だけでは、どこまでを指しているのか分からないため、自分がどの品目に反応するのかを踏まえて、一つひとつ確認することが大切です。

チェーン各社が公開しているアレルゲン一覧表では、木の実類がクルミ・カシューナッツ・アーモンドなどの品目ごとに分かれている表もあれば、「木の実」とひとまとめの表もあります。表の記号の意味や、どの品目まで載っているかはチェーンによって異なるので、アレルゲン一覧表の読み方を参考に確認してみてください。当サイトのチェーン検索では、クルミやカシューナッツを条件にメニューを絞り込めます。揚げ油や調理器具の共有による意図しない混入についてはコンタミネーションの基礎知識も参考になります。

子どもで特に多い

木の実類アレルギーは、特に幼児期以降の子どもで目立ちます。2023年の調査では、3〜6歳と7〜17歳の年齢群でクルミが原因食物の第1位となっており、幼児期・学童期の増加が著しかったと報告されています。乳児期に多い鶏卵・牛乳・小麦とは異なり、木の実類は成長してから注意が必要になる食物だといえます。年齢によって注意すべき食物が変わることや、子連れ外食の具体的な工夫は子どもの食物アレルギーと外食にまとめています。

木の実類アレルギーは重い症状につながることもある一方、症状の重さや反応する品目は一人ひとり異なります。食べてよいものの範囲や除去の方針は、必ず主治医・専門医と相談のうえで決めてください。外食の際は、公式のアレルゲン情報を事前に確認したうえで、最終的にはお店にも確認することをおすすめします。

参考資料

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療上の助言ではありません。掲載内容の正確性には努めていますが、制度や各社の公開情報は変更されることがあります。飲食の前には必ず店舗・運営会社の最新の公式情報をご確認ください。

ガイド一覧へ戻る