EUの食物アレルギー表示制度 — 規則1169/2011の14品目と外食にも及ぶ情報提供義務
公開日: 2026-07-23
ヨーロッパを旅行したり滞在したりするとき、食物アレルギーのある方が知っておきたいのがEUの表示制度です。EUでは「食品情報提供規則」と呼ばれる規則 (EU) No 1169/2011(Food Information to Consumers Regulation、略してFIC)が加盟国共通のルールを定めており、対象品目も、外食での扱いも、日本の制度とは大きく異なります。この記事では、2026年7月時点のEU規則の原文と欧州委員会・英国当局の公式資料に基づいて、日本の当事者の目線で押さえるべきポイントを整理します。日本の制度そのものは食物アレルギー表示制度の基礎知識を、各国比較の全体像は世界のアレルギー表示制度をご覧ください。
規則1169/2011(FIC)— EU共通の食品情報ルール
規則1169/2011は、EU全加盟国に直接適用される食品表示の基本規則です。適用範囲は「最終消費者向けのすべての食品」で、条文上、レストラン・食堂・学校・病院・ケータリングなどの「マスケータラー(大量調理施設)」が提供する食品も明示的に含まれています(第1条3項・第2条2項(d))。この附属書II(Annex II)に、表示義務のあるアレルゲン14品目が列挙されています。
表示義務のある14品目 — 日本と重ならない品目に注意
| No. | 品目(日本語) | 英語表記 |
|---|---|---|
| 1 | グルテンを含む穀物(小麦・ライ麦・大麦・オーツ麦など) | Cereals containing gluten |
| 2 | 甲殻類 | Crustaceans |
| 3 | 卵 | Eggs |
| 4 | 魚 | Fish |
| 5 | 落花生(ピーナッツ) | Peanuts |
| 6 | 大豆 | Soybeans |
| 7 | 乳(乳糖を含む) | Milk |
| 8 | 木の実(8種の具体列挙。次節参照) | Nuts |
| 9 | セロリ | Celery |
| 10 | マスタード(からし) | Mustard |
| 11 | ごま | Sesame seeds |
| 12 | 二酸化硫黄・亜硫酸塩(SO₂換算で10mg/kgまたは10mg/L超の場合) | Sulphur dioxide and sulphites |
| 13 | ルピナス(ルパン豆) | Lupin |
| 14 | 軟体動物(貝類・イカ・タコなど) | Molluscs |
日本の感覚で目を引くのは、セロリ・マスタード・ルピナス・亜硫酸塩・軟体動物でしょう。セロリはスープストックや香辛料ミックスに、マスタードはソースやドレッシングに広く使われる欧州の主要アレルゲンですが、日本の29品目には入っておらず、日本のラベルでは判別できません。ルピナスは豆の一種で、粉が焼き菓子やパンに使われることがあります。亜硫酸塩はワインやドライフルーツなどに使われる酸化防止剤で、閾値(SO₂換算10mg/kg・10mg/L)を超える場合に表示対象になります。軟体動物は貝・イカ・タコなどを一括りにした区分です。
「木の実」は8種類の具体的な列挙
附属書IIの「Nuts」は総称ではなく、アーモンド、ヘーゼルナッツ、クルミ、カシューナッツ、ペカンナッツ、ブラジルナッツ、ピスタチオ、マカダミアナッツの8種を具体的に列挙する形で定義されています。日本ではクルミ・カシューナッツが義務、アーモンド・ピスタチオ・マカダミアナッツが推奨ですが、ヘーゼルナッツ・ペカン・ブラジルナッツは日本の29品目に入っていません。特にヘーゼルナッツは欧州のチョコレート菓子やスプレッドで非常に一般的なので、木の実アレルギーの方はEU表示の方がきめ細かく確認できる場面もあります。
原材料表示ではアレルゲンが強調表示される
EUの包装食品では、アレルゲンをアレルギー欄に別記するのではなく、原材料リストの中で該当する語を太字・イタリック・背景色などの書体で他と明確に区別して強調する方式が義務付けられています(第21条)。棚で商品を手に取ったら、原材料リストの中の太字部分を追うのが基本の読み方です。日本の一括表示との読み方の違いはアレルゲン一覧表の読み方と合わせて整理すると理解しやすいはずです。
外食・非包装食品にも情報提供義務がある — 日本との最大の違い
日本ではアレルギー表示義務は容器包装された加工食品に限られ、外食は対象外ですが、EUでは包装されていない食品(ばら売りや量り売り、レストラン・カフェで提供される料理)にも14品目のアレルゲン情報の提供が義務付けられています(第44条)。欧州委員会も「レストランやカフェを含む非包装食品への義務的なアレルゲン情報」を規則の柱として明記しています。
ただし、どのような方法で提供するかの詳細は加盟国が国内措置で定めることができる(第44条2項)ため、実際の見え方は国によって異なります。メニューへの記載のほか、店内掲示と口頭説明の組み合わせなど、形式は様々です。たとえば英国はEU離脱後も同じ14品目の制度を維持しており、当局(食品基準庁)のガイダンスでは、メニューや黒板等への記載、または「口頭で案内する場合は入手方法を示す掲示」を求め、さらに店内で調理・包装して直接販売する食品には全原材料+アレルゲン強調のラベルを義務付けています。
旅行・滞在時の実践ポイント
- そば・いくらはEUの14品目に入っていません。 そばはグルテン穀物の列挙(小麦・ライ麦・大麦・オーツ麦)にも含まれず、独立の品目でもないため、強調表示も外食での情報提供義務も適用されません。そばアレルギーの方はガレット(そば粉のクレープ)など、自分から原材料を確認する必要があります。いくら・あわびなど日本の推奨品目の多くも同様です。
- アレルゲンは現地語または英語で伝えるのが確実です。上の表の英語表記をメモやスマホで見せられるようにしておくと、口頭提供の国でも確認がスムーズです。
- 旅行前の準備は主治医に相談を。 症状への備えや薬の携行は個々の状況によるため、この記事では扱いません。
なお、この記事は2026年7月時点の規則統合版と公式ガイダンスに基づいています。制度は改正されうるので、渡航前に最新情報を確認してください。日本国内の外食チェーンのアレルゲン情報はチェーン検索で調べられます。
参考資料
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療上の助言ではありません。掲載内容の正確性には努めていますが、制度や各社の公開情報は変更されることがあります。飲食の前には必ず店舗・運営会社の最新の公式情報をご確認ください。