外国人のお客様のアレルギー申告に応える — 多言語ツールと店側の準備

公開日: 2026-07-23

英語のメニューを指しながら、たどたどしい日本語で「たまご、アレルギー」と伝えてくるお客様——外国人のお客様からのアレルギー申告は、「言葉が通じなかったらどうしよう」という不安から身構えてしまいがちな場面です。しかし、応対の中身は日本人のお客様への対応と変わりません。言葉の壁の部分は、公的機関が無料で公開している多言語ツールでかなり埋めることができます。この記事では、外国人のお客様の背景と、店頭に備えておきたいツール、そのまま使える簡単な英語表現を整理します。

「聞けば教えてもらえる」前提で来店するお客様がいる

まず知っておきたいのは、お客様側の常識が日本と違うことがある、という点です。たとえばEUでは、包装食品だけでなくレストランやカフェで提供される料理にも、アレルゲン14品目の情報提供が法律で義務付けられています(制度の中身はEUの食物アレルギー表示制度参照)。そうした国から来たお客様にとって、「飲食店に聞けばアレルゲンを教えてもらえる」のは当たり前の経験です。一方の日本では、外食のアレルゲン情報提供は法的義務のない自主的な取り組みです。

この制度の違いを知らないまま来店したお客様が、言葉が通じずに申告を諦めて「たぶん大丈夫だろう」と注文してしまうことこそ、店にとって最も避けたい事態です。必要なのは流暢な外国語ではなく、言葉が十分に通じなくても品目を確認できる仕組みを店に備えておくことです。

店頭に備えたい公的な多言語ツール

どちらも無料で入手できます(2026年7月時点)。

  • 東京都のアレルギーコミュニケーションシート — お客様にアレルギー食材を記入してもらい、該当食材を含まないメニューや除去できるメニューを、文章の指差しで伝えられるシートです。文章は日本語・英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語の順に併記され、これらの言語が分からない方ともやり取りできるようピクトグラム(絵文字)が使われています。タイ語・フランス語・スペイン語・ドイツ語・ロシア語に対応した版もあり、東京都のページからダウンロードして印刷しておけば、そのままレジ横に置けます。
  • 消費者庁のスマートフォン向け食物アレルギーコミュニケーションシート — 英語・中国語・韓国語版があり、お客様が自分のスマホでアレルゲンにチェックを入れて画面を見せる形式です。お客様側が使うツールですが、店側が存在を知っていれば、画面を見せられたときに「アレルギーの申告だ」と即座に理解して応対に入れます。

なお、同じ消費者庁のページには訪日外国人向けに日本の食品表示制度を説明したパンフレット(英語・中国語・韓国語)もあり、物販を併設する店舗では案内に使えます。

応対の原則は日本人のお客様と同じ

品目と程度を聞き取り、厨房へ確実に伝え、調理し、照合して提供する——申告への応対の4段階フローは、お客様の言語が変わっても同じです。とりわけ守りたいのが「曖昧に答えない」原則です。消費者庁の事業者向けパンフレットは、あいまいな回答をしないことを応対の基本に挙げています。原材料に確信が持てないまま、その場をしのぐために "OK" や "No problem" と答えるのは、日本語で根拠なく「大丈夫です」と言うのと同じ危険な応対です。「わかりません」と正直に伝えることは、英語でも誠実な回答です。次のような簡単な表現で十分伝わります。

伝えたいこと英語の例
確認してきますJust a moment, please. I will check.
確実なことは言えませんWe cannot be sure if this dish is safe for you.
◯◯を抜くことはできませんSorry, we cannot remove ◯◯ from this dish.

共用の揚げ油や調理器具による意図しない混入(厨房でのコンタミネーション対策参照)の可能性を伝えるときも、"Our kitchen also handles ◯◯." のように事実を短く伝えれば足ります。

指差し・筆談・翻訳アプリも組み合わせる

会話で伝わらなければ、書く・見せる・指し示す方法に切り替えます。翻訳アプリは会話の補助として有効ですが、食材名や品目名は誤訳や訳語のぶれが起こりえます。品目の最終確認は、上で挙げたシートのように対訳があらかじめ固定された書面で行うほうが確実です。お客様がスマホの翻訳画面や自作のアレルギーカードを見せてきたら、急かさずに読み、該当する品目を指差しで復唱して認識を合わせましょう。漢字圏のお客様には筆談が有効な場面もあります。

自店の一覧表にも英語表記やピクトグラムを

アレルゲン一覧表を公開しているなら、品目名に英語を併記したりピクトグラムを添えたりするだけで、外国人のお客様が自分で確認できる範囲が広がり、店頭での応対負荷も下がります。これから公開を始める場合の進め方はアレルゲン情報の開示を始めるにはにまとめています。また、シートの置き場所や誰を呼ぶかといった外国人対応の手順を決めたら、アルバイトを含む全員に共有してください(従業員のアレルギー教育と店内体制づくり参照)。せっかく用意したシートも、存在を知らない従業員が応対すれば使われないまま終わります。

この記事は公的資料に基づく参考情報であり、ここに挙げたツールや表現を使えば安全が保証されるというものではありません。多言語対応を含む具体的な応対手順は、管轄の保健所や専門機関にも相談しながら、自店の業態と体制に合わせて自社の責任で判断・整備してください。

参考資料

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療上の助言ではありません。掲載内容の正確性には努めていますが、制度や各社の公開情報は変更されることがあります。飲食の前には必ず店舗・運営会社の最新の公式情報をご確認ください。

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