大人の食物アレルギー — 成人発症の特徴と原因食物

公開日: 2026-07-23

食物アレルギーは子どもだけの病気ではない

食物アレルギーは乳幼児に多い疾患ですが、子どもだけのものではありません。厚生労働科学研究班の「食物アレルギーの診療の手引き2023」は、IgE依存性の食物アレルギーを臨床型ごとに整理しており、そのなかには発症年齢が学童期から成人期にわたるタイプが含まれています。即時型症状(蕁麻疹やアナフィラキシーなど)は乳児期から成人期まで、後で触れる口腔アレルギー症候群や食物依存性運動誘発アナフィラキシーは学童期以降にも見られる型として記載されています。つまり、大人になってから初めて食物アレルギーの症状が出ることは、決して例外ではありません。

このことは統計からもうかがえます。消費者庁の即時型食物アレルギー全国モニタリング調査(令和5年・2023年、医療機関を受診した6,033例の解析)では、18歳以上の症例のうち51.6%が「初発」、つまりそれまで診断されていなかった人が初めて症状を起こした例でした。7〜17歳群の初発が40.0%だったのと比べても、成人期はむしろ初発の割合が高くなっています。診療の手引きも、成人の診断では花粉症の有無や職業上の食物との接触なども確認するとしており、大人の発症には子どもとは違う背景が関わることを示しています。

成人の原因食物は子どもと違う

同じモニタリング調査では、原因食物が年齢によって大きく変わることも示されています。18歳以上(318例)の上位3品目は次のとおりで、0歳で最多だった鶏卵・牛乳は上位から外れます。

年齢群1位2位3位
0歳鶏卵 60.6%牛乳 21.4%小麦 13.6%
18歳以上小麦 21.1%エビ 16.7%大豆 8.2%

18歳以上では上位数品目で全体の45.9%を占めるにとどまり、残りは多くの食品に分散しています。診療の手引きの臨床型分類でも、学童期から成人期の即時型の原因として、甲殻類・魚類・小麦・果物類・木の実類などが挙げられています。エビをはじめとする甲殻類や、果物・木の実は、大人になってから問題になりやすい食品として押さえておくとよいでしょう。成人1位の小麦については小麦アレルギーと外食で詳しく解説しています。年齢による原因食物の移り変わり全体は、子どもの食物アレルギーと外食の年齢別の表も参考にしてください。

花粉症の人に起こることがある「口の症状」

大人の食物アレルギーで知っておきたいのが、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)です。診療の手引きは、これを花粉のアレルゲンと果物・野菜などのアレルゲンが交差反応することで、花粉アレルギーのある人に食物アレルギー症状が起こる病態と説明しています。症状は主に口唇・口腔・咽頭のかゆみや違和感といった口の周りの即時型症状(口腔アレルギー症候群、OAS)で、食べた直後から始まることが多いとされます。まれに全身症状を伴うこともあると記載されています。

手引きには、関わりやすい花粉と食物の組み合わせも示されています。たとえばカバノキ科(ハンノキ・シラカンバ)の花粉はバラ科の果物(リンゴ・モモ・サクランボなど)やヘーゼルナッツ・大豆と、スギ・ヒノキの花粉はバラ科果物や柑橘類と交差反応することがあるとされています。

ただし、これは「花粉症の人はこれらの果物を食べてはいけない」という話ではありません。反応の有無や程度は一人ひとり異なります。特定の果物や野菜で口の中がかゆくなる・違和感が出るといった症状が繰り返しあるときは、自己判断で食品を避け続けるのではなく、専門医に相談して確かめることが大切です。

「食べて動くと」起こるタイプもある

もうひとつ、成人や学童期以降に見られる型として、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)があります。診療の手引きは、これを原因食物を食べた後に運動することでアナフィラキシーが誘発される病態と説明しています。食べただけ・運動しただけでは症状が出ず、その組み合わせで起こる点が特徴で、発症年齢は学童期から成人期とされています。

この記事は、こうした型が「存在する」ことをお伝えするにとどめます。診断の方法や、どう備えればよいかは一人ひとり異なり、医師が判断するものだからです。心当たりのある症状(食後の運動中に起こった強いアレルギー症状など)があれば、必ず専門医に相談してください。アナフィラキシーそのものについてはアナフィラキシーの基礎知識にまとめています。

大人ならではの外食シーンで気をつけたいこと

大人の外食は、飲み会や宴会のコース、接待など、自分でメニューを選びにくい場面が少なくありません。こうした席では、次の点に気を配ると安心です。

  • コース料理は原材料を確認しにくい。 宴会やコースは、何が使われているか分からないまま料理が次々と出てくることがあります。予約の段階でアレルギーを伝えておき、当日も一品ごとに確認できるようにしておきましょう。具体的な伝え方は飲食店への確認のしかたにまとめています。
  • お酒にも原材料への注意を。 消費者庁のハンドブックによれば、アレルギー表示が義務付けられているのは容器包装された加工食品で、飲食店で提供される食事(外食)は対象外です。加えて酒類については、症状がアレルゲンによるものかアルコールの作用によるものか判断が難しいため、原材料に麦や果実などを使っていても、特定原材料を含む旨の表示は現時点で義務付けられていません。気になる場合は銘柄や原材料を確認しましょう。
  • 「言い出しにくさ」を前提に準備する。 接待や大人数の席では、その場でアレルギーを切り出しづらいこともあります。あらかじめ幹事や同席者に伝えておく、事前に店へ連絡しておくなど、当日その場で判断せずに済む段取りをしておくと負担が減ります。
  • 取り分けやシェアでの混入に注意。 大皿料理を取り分ける席では、トングや箸の使い回しで、注文した料理以外のアレルゲンが混ざることがあります。調理器具や揚げ油の共有による意図しない混入はコンタミネーションの基礎知識にまとめています。

出かける前に公式のアレルゲン情報を確認しておくことも、外食での誤食を防ぐ第一歩です。チェーン検索から行き先の候補を調べ、表の記号の意味はアレルゲン一覧表の読み方で確認しておくとよいでしょう。

気になる症状は自己判断せず専門医へ

大人になってからの食物アレルギーは、原因が分かりにくかったり、花粉症や運動といった別の要因が関わったりすることがあります。だからこそ、「たぶんこれが原因だろう」と自分で決めつけて食品を避け続けたり、逆に我慢して食べ続けたりするのは避けたいところです。診療の手引きも、感作(アレルギー検査での陽性)と実際に症状が出ることは必ずしも一致しないとしており、検査だけで食べてよいかを判断できるものではありません。

疑わしい症状があるときは、アレルギーを専門とする医療機関で相談してください。医療機関を探す手がかりとして、日本アレルギー学会が「専門医・指導医一覧(一般用)」を公開しており、地域などから専門医を調べられます。本記事の数値や記述は、記載時点(2026年7月)で公開されている調査・資料に基づく一般的な情報であり、診断や治療、食べてよいかどうかの判断を示すものではありません。個々の対応は必ず主治医・専門医に相談のうえで決めてください。

参考資料

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療上の助言ではありません。掲載内容の正確性には努めていますが、制度や各社の公開情報は変更されることがあります。飲食の前には必ず店舗・運営会社の最新の公式情報をご確認ください。

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